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コラム FM小田原 腫瘍(2)

腫瘍各論

担当 石井和義(おだわら動物病院)

 人に発生する腫瘍は、ほとんどの腫瘍が犬や猫にも同じように発生します。
しかし腫瘍の種類により、同じ腫瘍でもその病態や予後は、人、犬、猫、それぞれでかなり違う場合があります。
今回は、犬や猫によく発生する代表的な腫瘍疾患について解説をします。
体内に発生する腫瘍は、一般の飼い主さんにはなかなか発見することが困難なため、日頃気が付きやすい体の表面に発生する腫瘍を中心に解説します。

乳腺癌

この腫瘍は、高齢のメスによく発生します。若い時に避妊手術をしたメスは、その発生率がかなり低くなることが知られています。犬の場合、胸にできたしこりのほぼ過半数がこの乳腺腫瘍であり、その中で約50%は悪性の乳癌であるという調査データがあります。猫の場合は、その約80~90%が悪性であり、メス猫の胸にできたしこりはほぼ悪性であるため、特に注意が必要です。しこりが小さい時には痛みも出血もないため様子を見てしまう場合が多いのですが、胸にしこりを見つけたら、すぐに受診することが大切です。

(悪性)リンパ腫

この腫瘍は、血液細胞のひとつであるリンパ球が腫瘍化し、それが全身に転移してしまう怖い病気です。体のどの部分にも発生する可能性があり、場合によっては明らかな臨床症状を示さない場合もあるため、発見が遅れることがよくあります。一般的に最も気が付きやすい症状は、全身のリンパ節が腫れる場合です。顎の下、脇の下、内股、膝の裏側などに腫れが見つかった場合は、できるだけ早く検査・診断をする必要があります。基本的に根治させることが困難な場合が多く、抗癌剤による内科療法が主体となります。

肥満細胞腫

この腫瘍も、体のどの部分にも発生する可能性があります。犬と猫ではかなりその悪性度が異なり、犬ではほとんどの場合が悪性です。特に、生殖器周りや皮膚と粘膜の移行部などに発生した場合は注意が必要です。この腫瘍の特徴は、必ずしもしこりを形成するだけではなく、部分的な赤みや腫れ、または潰瘍のように見えることもあるため、飼い主さんは腫瘍と気が付かない場合があるので、注意が必要です。犬では、年齢が7~9歳頃が最も発生が多いと言われています。体の内部に発生した場合は、かなり病状が進行するまで分からないこともあります。

扁平上皮癌

この腫瘍は、顔面や眼瞼、耳や鼻などに比較的よく認められます。口の中や体幹にも発生することがあり、大抵の場合、悪性の経過を辿ります。白い毛色の猫では、紫外線が刺激となって発生するとの報告があります。口の中、舌や歯肉、鼻などに発生した場合は手術により切除できない場合も多く、それらは多くの場合、命が危うくなります。中高齢の犬猫によく発生し、手術により切除が不可能な場合は、放射線療法、抗癌剤などの内科的治療で処置を行うことになりますが、あまり治癒率は高くありません。

軟部組織肉腫

軟部組織肉腫には、血管周皮腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫などが含まれ、筋肉や血管、皮下組織などに発生する悪性腫瘍の総称です。転移は比較的まれですが、腫瘍細胞の浸潤性が非常に強く、かなり大胆に外科的切除を行っても、同じ場所にまた再発してしまう場合がよくあります。このように、切除をしたのと同じ場所に再発した場合、根治させることはかなり難しくなります。抗癌剤に対する反応も鈍く、治療が難しい腫瘍の一つです。

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