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コラム FM小田原 肝臓の病気

肝臓の病気

担当 井村 尚康(アニイ動物病院)

 今回は肝臓のお話をしましょう。
肝臓は体の中で化学工場のような働きをしています。小腸から吸収された栄養素を体内で利用しやすい形に作り変えたり、有害物質を無害なものに変化させたりしています。また胆汁という消化酵素を作って小腸に送り出しています。

 肝臓病の初期の段階では、特徴的な症状が出にくいので基本診察だけで診断するのは難しくなります。なんとなく元気がないとか、食欲が落ちた気がするとか、あるいは時々吐いたり下痢したりするとか、そんな軽い症状の患者さんでも念のため血液検査をしてみると肝臓に原因がありそうだという結果が出ることがあります。またまったく元気に見えても、健康診断の血液検査で肝臓病が見つかることもあります。

 肝臓病の中でも黄疸が出るタイプでは、飼い主さんでも発見できるときがあります。黄疸とは血液中のビリルビンという成分が増えすぎて皮膚が黄色くなる状態を言います。赤血球がたくさん破壊されてビリルビンが増える場合、肝臓の機能が悪くなってビリルビンが増える場合、そして胆汁が小腸に流れていく経路に滞りがあって黄疸になる場合があります。

 人間は毛が少ないので肌色がわかりやすいですが、動物は顔も体毛に覆われていますから、皮膚の色を見分けるのが難しくなります。犬猫で顔色のわかりやすい場所は耳の内側、おなかの毛の少ないところ、上まぶたをめくった白目の部分です。ペットとスキンシップをとって皮膚の色も観察するようにしてください。

 肝性脳症というふらつき、痙攣、異常行動など神経症状を起こす肝臓の病気もあります。腸の中で発生するアンモニアなどの有害物質は真っ先に肝臓に運ばれて解毒され全身に回らないようになっています。ところが、生まれつき、または激しい炎症の結果血液の流れが肝臓を通り過ぎてしまうような異常が起きた時は有害物質が直接全身に流れてしまうために、神経障害の症状を引き起こします。

 肝臓病は徐々におきることが多いですが、ウイルスで感染する犬伝染性肝炎や、ネズミのおしっこから感染する犬のレプトスピラ病などは激しい肝炎を起こし、急に具合が悪くなり早ければ1週間程度の経過で命を落とすこともあります。この2つの伝染病にはワクチンが開発されていますので動物病院で予防注射を受けるようにしてください。

 いろいろお話してきましたが、肝臓にかかわる病気は目に見える症状が出てからでは治療が難しくなる事が多いようです。予防としてはいい便、いいおしっこのでる良質適量の食事、飼い主とペットの双方にストレスの少ない健全な生活、予防接種、そして定期健康診断と血液検査による早期発見、早期治療などがあげられます。

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