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コラム FM小田原 老齢期の健康管理

老齢期の健康管理

担当 清水敦志(ミユキ動物病院)

 高齢犬が罹りやすい病気は、心臓病、脊椎疾患、関節疾患、腎臓病、腫瘍、歯科疾患、子宮蓄膿症、前立腺肥大、ホルモン疾患などです。
心臓病は小型犬種では僧帽弁閉鎖不全症、大型犬の場合は心筋症が多く認められます。どちらも心臓から全身に血液を送る機能が低下するため、心臓に負担がかかるため、疲れやすくなったり、咳が出たりします。特にキャバリア、マルチーズ、ラブラドールレトリバーなどは注意が必要です。
次に脊椎の疾患は椎間板ヘルニアや変形性脊椎症があります。どちらも脊髄神経を圧迫する事により痛みや運動障害が現れます。重度の場合は下半身麻痺などになることもあります。老齢になったら急な階段の昇り降りや、背骨や首に衝撃が加わる様な運動などは控えるようにしましょう。特にダックスフンド、ビーグル、柴、シーズーに多く認められます。
関節疾患では、変形性骨関節症や前十字靭帯断裂症などが起こりやすくなります。変形性骨関節症は大型犬に特に認められます。関節軟骨の消耗により骨の変形が起こり、関節の機能が制限されて歩行出来なくなります。肥満犬の場合は症状がひどくなりますので、食事の改善により肥満を出来るだけ解消する必要があります。また前十字靭帯断裂症は膝関節にある十字に交差した靭帯で、膝関節の動きを調整しています。この靭帯が突然切れることで、膝に体重をかけられずに後ろ足をあげて歩くようになります。こちらも老化で切れやすくなった靭帯が、膝の負担になる運動をしたり、肥満により膝関節に負担がかかる事でおきやすくなります。
腎臓病は加齢により腎臓の機能が衰えて、慢性腎炎になり慢性腎不全へと移行します。老犬が食欲の減少、嘔吐、飲水料の増加、体重の減少などが認められるとこの病気の可能性もあります。腎臓は一度壊されると再生出来ませんので、これ以上悪化しないように治療をしていくことになります。早期に発見をすることで、食事療法や投薬により、腎臓機能の悪化の進行を遅くすることが出来ますので、老齢犬は最低でも毎年、血液検査や尿検査を行なうようにしましょう。
次に腫瘍ですが、乳腺の腫瘍は雌犬で最も多く認められます。また皮膚の腫瘍も多く認められます。腫瘍の治療は外科手術、化学療法、放射線療法などの治療法があります。これら単独か、場合によっては組み合わせることで治療を行ないます。人間と同じで早期発見ほど生存率は高くなりますので、日頃から体表にしこりがないか、スキンシップをしながら確かめましょう。
また、ホルモン疾患として、甲状腺機能低下症と糖尿病、副腎皮質機能亢進症などがあります。甲状腺機能低下症の症状には、散歩に喜んで行かない、毛艶が悪い、被毛が薄い、寝てばかりいる……。いずれも「年のせい」と考えがちな状態ですが、調べてみると実はこの病気だった、という場合が意外に多いのです。さらに、糖尿病や副腎皮質機能亢進症は、飲水量と食欲が増進することが多いです。体重1キロあたり100㏄以上、一日に水を飲むようでしたら、これらの病気が疑われます。
歯科疾患としては、歯石による歯肉炎などが起きやすいです。
また、老齢の雄犬は前立腺肥大がおき排尿や排便がし難くなったり、肥大した前立腺が炎症を持つと痛みが出て、食欲などが低下したりもします。雌犬の場合は、発情後約1ヶ月以内で子宮に膿が貯まる子宮蓄膿症という病気にかかる事があります。お腹が急に膨れてきたり、陰部から血膿が出てくるなどの症状があり、食欲が無くなったりします。放置すると死亡することもあります。どちらの病気も去勢や避妊手術をすることで、予防することが出来ます。
最後に14才以上の犬に圧倒的に多い病気として痴呆があります。犬にも痴呆があるの?と思われるかもしれませんが、13才以下では1%も満たないこの痴呆は、14才以上になると圧倒的に多くなります。獣医療もここ数年で進歩し、犬の平均寿命が伸びたため、この痴呆も近年とても多くなっています。症状としては、1)夜中に意味なく単調な大声で鳴きだしとめても鳴きやまない。
2)歩行はとぼとぼ前進のみで、円を描くように歩く(旋回運動)
3)狭いところに入りたがり、自分で後退できずに鳴く
4)飼い主、自分の名前、号令が分からなくなり何事にも無反応
5)よく寝て、よく食べ、下痢もせず、しかも痩せてくる
これらのうち1つでも当てはまれば、痴呆の可能性があります。
もちろんこれらの症状があっても、他の病気の可能性もあります。
この病気の一番厄介なところは、今まで出来ていたことが出来なくなり、夜鳴きが近所への迷惑にならないか飼主が不安になったりすることで、飼い主とワンちゃんとの距離が離れてしまい、絆が弱まってしまうことです。治療としては、最近はサプリメントなどの痴呆の治療薬も進歩していますので、痴呆と考えられる症状が出たら、なるべく早く動物病院へ診察にきて下さい。特に柴犬などの日本犬は痴呆になりやすい犬種といえます。

次に、猫の高齢期の病気ですが、猫では圧倒的に腎臓病が多くなります。飲水量がとても増えたり、おしっこの量が多くなって、匂いがしなくなったり、嘔吐することが多くなり、痩せてきたらこの病気の可能性が高くなります。犬の時にも延べたように、これらの症状がでたら血液検査や尿検査をしましょう。また、猫の場合は7才になったら、定期的に尿検査と血液検査は受けるようにしましょう。
また、猫のホルモン疾患で気を付けなくてはいけないものは、甲状腺機能亢進症です。症状としては急に元気になり、攻撃的な性格になることもあります。食欲が増してたくさん食べ、水もよく飲むようになりますが、いくら食べてもやせていき、しだいに毛づやも失われます。さらに、尿の量が多くなり、嘔吐や下痢もみられ、やがて食欲も落ちていきます。病気が進行すると心臓の病気を併発することもあります。
その他には、歯石の不着による歯肉炎などの歯科疾患、心臓疾患としては心筋症が多い認められます。

老齢時に罹る病気は、完治しない病気が多いですが、早めの診断・治療で病気の進行を遅らせることは出来ます。
犬や猫も7才を迎えたら、一度は精密検査を行なう必要があるでしょう。
そして、10才を越えたら毎年精密検査を行なうことで、病気を早期に発見することが出来ますので、検査を行なうようにしましょう。

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