コラム FM小田原 犬の問題行動
犬の問題行動
担当 足立衛紀(足立どうぶつ病院)
近年、動物病院は動物の病気を治すだけでなく、しつけに関する事や問題行動のお悩みのご相談も多く受けるようになってきました。そのため、ほとんどの獣医師は犬のしつけや問題行動について学んでいます。そして時には薬で治療することもあります。小田原獣医師会でもしつけ専門の講師をお招きして年に2回ほど「家庭犬のしつけ教室」を開催しています。
わんちゃんのお悩みベスト3は、①無駄吠え ②咬みつく ③排泄の問題 です。どの問題もわんちゃんと一緒に生活していく上でとても困りますね。でも、まず初めに言っておきたいのですが、盲導犬のような素晴らしく”出来の良い子”はいないということです。盲導犬のような使役犬は、子犬のうちに適性のない犬と判断されると訓練にも進めません。そして毎日の厳しい訓練が始まっても落第していく犬がたくさんいるということです。もしこのラジオをお聞きの奥様がいらっしゃいましたら考えていただきたいのですが、「あなたのご主人には100%満足されていますか?」 「あなたのお子様は言うことがないくらい、反抗もしない良い子ですか?」このような質問をするとお分かりだと思うのですが、これとおなじように「飼い主さんが100%満足できるわんちゃんなんてこの世にいない。」ということです。犬は当然、生き物ですので、彼らにも自我や意識というものがあります。人間という”生き物”と、犬という”生き物”が一緒に生活する訳ですので様々な問題が起こっても、これは当然のことなのですね。つまり犬の問題行動を治すといっても、「このようにすれば治りますよ。」というような完璧な方法はありません。治す方法は犬の性格や飼い主さんの性格、また飼育環境などによっても変わってきます。
まずはこの程度に考えていただきたいのです。しかし、一緒に生活するのですからどうしても耐えられない事ってありますよね。「留守中にごみをひっくり返したり、衣類におしっこをかけるので困ります。」「日中留守にしている間、ひどく吠えているとお隣から苦情が来ました。」「来客があるとひどく攻撃的になり困っています。」など多くの問題行動は
”アルファーシンドローム”といい犬が家の中のリーダーになってしまっていることが原因となっています。「リーダーであるオレ様の気に入らないことをしやがって!!」というお犬様の怒りが様々な問題を引き起こしているのです。この問題を治すためには飼い主さんに犬の“良きリーダー”になってもらうほかはありません。わんちゃんが家にやってきた当初からリーダーが誰なのか、わからせる必要がありますが、問題行動が起こってからでもリーダーに復活する方法は色々とありますので、信頼のできる訓練士さんやかかりつけの獣医師に相談していただくとよいと思います。
また、子犬を飼う時期は多くの研究から欧米では生後7週目での入手を進めています。あまり早く親犬から離した場合、子犬同士で遊ぶ機会が少なく、将来、攻撃的な性格になってしまうことが多いと考えられています。子犬が社会化の時期、つまりいろいろな刺激を受けなければならない時期に刺激を受ける機会が少ないと、成長してから様々な刺激に対して恐怖反応を起こしやすいという研究論文もあります。日本では5週目の犬がペットショップにいることも多く、社会化の経験が不足している可能性がありますので、家に来てからもなるべく他の犬とたくさん遊ばせてあげる必要があると思います。
わんちゃんの寿命も延びて10年、15年、長ければ20年と付き合っていく動物でありますので、楽しくしつけをしていただき、わんちゃんも飼い主さんもハッピーになっていただきたいと存じます。