コラム FM小田原 年齢別疾患
若齢期に発症しやすい病気について
担当 清水 敦志(ミユキ動物病院)
今回は、若齢期に発症しやすい病気について説明します。
犬・猫に共通する疾病として、感染症、低血糖症、先天性疾患があげられます。また子犬においては、異物摂取、股間節の問題も見逃すことができません。
まずは感染症についてですが、生後3ヶ月頃の母親からの免疫が切れる時期は特に注意が必要です。体も小さく抵抗力がないため、一生のうちでもっとも病気にかかりやすい時期であり、重症化することも多くなります。
子犬のウイルス感染症では、犬パルボウイルス感染症、犬ジステンパー、犬パラインフルエンザ感染症などが多くみられます。「パルボ」という言葉を聞いたことがありますか?嘔吐と血様の下痢が主な症状で急激に衰弱します。犬ジステンパーは咳と鼻水などの症状から始まりますが、末期には脳にウイルスが侵入し脳炎を起こし神経症状が現れます。この2つのウイルス疾患は、治療が遅れると死亡する可能性が高くなります。また、犬パラインフルエンザ感染症は、伝染性の呼吸器疾患の1つで咳を特徴としますが、こちらは神経症状がみられません。
子猫のウイルス感染症では、猫伝染性鼻気管炎と猫カリシウイルス感染症が多くみられます。これらは猫の風邪で、くしゃみ・鼻水・目ヤニなどの症状がみられますが、こじれると肺炎になったり、目がつぶれてしまうこともあります。
これらの感染症はワクチンによって予防できる病気です。ワクチンプログラムにそって数回の接種を行い、確実に免疫を獲得することが大切です。
ウイルス感染のほか、寄生虫感染も頻繁にみられます。犬猫ともに回虫による被害が多いのですが、母親からの胎盤を介して感染したり、他の犬の糞をなめることで経口的に感染することもあります。子犬・子猫時代は何回か検便を行い、早期に発見し治療することを心がけましょう。
次に低血糖症についてお話します。血糖値が極端に下がり、ケイレンなどをおこす病気です。若齢期には体内で糖を作ったり、貯えたりする仕組みが発達していません。病気で下痢や嘔吐を繰り返したり、食事の量が不充分であったりすると、比較的簡単に低血糖に陥ってしまいます。子犬・子猫は空腹の時間が長くならないように、1日に4〜5回食事を与えなければなりません。
次に先天性疾患についてです。心臓に異常がある場合、心音やリズムに影響が現れます。肝臓や腎臓の異常では、発育遅延やケイレン発作などがみられることがあります。また水頭症はチワワなど相対的に頭部が大きい犬種に発症します。また先天的にてんかんがある場合は、若齢期からケイレン発作をおこすことが多いです。
次に異物摂取についてです。人間の赤ちゃんとおなじで、子犬の時期は何でも口に入れて確かめるため、危険な物を食べてしまうことが多いです。飼い主さんがあわてて口の中から取り出そうとすると、犬も取られまいと必死になって飲み込んでしまうというパターンもよくみられます。腸閉塞や中毒を起こす可能性もあるため、かなりの注意が必要です。食べてはいけない物は、犬の届く範囲に絶対に置かない!を教訓にして下さい。
最後に犬の股関節の疾患についてお話します。小型犬に多いレッグ・ペルテス病と大型犬に多い股関節異形成症という病気があります。4ヶ月齢〜1才前後で気づくことが多いのですが、どちらも股関節と大腿骨とがうまく可動しないために歩行障害がおこります。遺伝的要因が強く、予防策はありませんが、早期発見し治療することで、歩行障害を軽減することが可能です。
子犬・子猫の場合は、急変することがありますので、様子をみないでなるべく早く、動物病院へ受診することをお勧めします。