コラム FM小田原 ペットロス
ペットロス
担当 神谷圭一(OKどうぶつ病院)
春はお別れの季節です。また新しい出会いの季節でもあります。今回を持ちましてこのペットのコーナーも終了となります。1年近く御清聴下さいましてありがとうございました。
さて今回のテーマは最終回にふさわしいかどうかわかりませんが、お別れにちなんで「ペットロス」です。最近は一般にもだいぶ浸透した言葉なので、御存知の方も多いと思います。つまり飼われていたペットが亡くなってしまい、喪失感、さびしさ、虚脱感などから精神的に病んでしまい、何も手がつかない、何もやる気が起こらないぐらい日常生活に支障をきたす様な飼い主の状態の事です。いわゆる精神科、心療内科の担当する病気に含まれると言えるでしょうか。その度合いはそのペットに対する愛情が深かった程、また共に暮らした時間が長い程、またいろいろな思い出が多かった程大きいと思います。また特に病気や突然の事故で、寿命を全うできずに旅立たれた場合も悲しみは想像しがたい程大きいと思います。「何でもっと早く病気に気付いてあげれなかったんだろう」「何で窓を閉めておかなかったんだろう」などなど、悔やんでも悔やみ切れない気持ちは大きいでしょう。確かに家族の方が亡くなれば、悲しいと思うのは普通の感情でしょう。それは家族の一員であるペットでも同じだと思います。しばらく落ち込むのは当たり前でしょう。しかし人生、いつまでもそうしているわけにはいられません。個人差はありますが、時間とともに立ち直り、日常生活に戻って行くのが普通だと思います。それができないで、仕事も勉強も家事も手がつかない、また他人に八つ当たりする、病気で亡くなった場合などはそのペットを診察した獣医を逆恨みする、こうなったらもう「ペットロス」です。ちなみに我々獣医は神様ではありません。全ての病気を治してあげられるわけではありません。病気を治すのはその動物自身であって、我々獣医はいろいろな知識と技術を使ってちょっと手助けするだけです。獣医を恨むのは程々にお願いします。話がそれましたが、また苦痛を伴う困難な病気に罹り、治療もなかなか難しい場合など、動物では究極の選択枝として安楽死がありますが、この場合もよくよく考えて決断しないと、あとあと「ペットロス」に陥りやすいと思います。
さてそれではどうしたら「ペットロス」にならずに済むかですが、これはいろいろと意見はあるでしょうが私の見解で言うと、多少の「ペットロス」はしかたないと思います。むしろ「ペットロス」を楽しんで?下さい。その事が亡くなった動物への良い意味での供養になりますから。そして大切なのは、いつまでも心の中でその子の事を覚えていてあげて下さい。後に良い思い出として今後の人生に活かされる日がきっと来ると思います。後は時間が解決するのを待つだけです。他人がどうこう言ってなぐさめても、受け身ではダメです。要は自分でそこから立ち直るしかありません。仕事や趣味で気を紛らわすのも良いでしょう。また新しいペットを迎えるのも一つの方法でしょうが、これに関しては少し注意が必要です。新しく飼った子は亡くなってしまった子の代わりでは決っしてない事を理解して下さい。全く別の性格の動物です。前の子と比較したり、前の子と同じ生き方を強要したりしてはいけません。そうする事で今度の子が不幸になったりでもしたら、それこそもし将来その子が亡くなった時に再び「ペットロス」になってしまうかもしれません。くれぐれも気をつけて下さい。また我々が飼うペットの多くは、寿命で言うと例えば犬・猫で10~15歳、うさぎで5歳、ハムスターだとせいぜい2歳ぐらいというぐあいに我々人間よりはるかに短いものです。必ず飼い主は死に直面しなければなりませんので、ペットがそこそこの高齢を迎えたら、死について真剣に考えて、いざという時の心の準備をしておくことも「ペットロス」対策には良いでしょう。またペットが寿命を全うできる様に、今までこのペットのコーナーで、我々獣医師会の先生方がお話してきた病気の事を参考にして、日頃の健康管理に努めて、長生きさせてあげて下さい。この事も「ペットロス」予防には大切だと思います。
しかしながら不幸にして「ペットロス」も病気の域に達っしてしまったらどうぞ早目に心療内科で見てもらって下さい。
最後は人生相談みたいになってしまいましたが、我々も含め命あるものいつかは死を迎えます。それは自然の摂理ですから。それではいつかまた機会があったらお会いしましょう。