コラム FM小田原 ヘルニアについて
おへそのヘルニアについて
担当 井村尚康(アニイ動物病院)
今回はへそヘルニアの話をします。
私は子供の頃、手塚治虫のブラックジャックという漫画が好きで何回も読みました。その中に「デベソの達」というお話があります。少年の達ちゃんは大きいへそヘルニアの持ち主でしたが、大好きな化石ほりに熱中するうちにヘルニアに腸がつまってしまってブラックジャックの手術を受けることになるという物語でした。へそヘルニアが簡潔に説明されています。みなさんも機会があったら読んでみて下さい。ワンちゃんや猫ちゃんは自身がヘルニアを持っていても病気を自覚しませんから、達ちゃんのようにおなかに力を入れすぎて問題になる可能性が高いかもしれません。
本題に入ります。お母さんのおなかの中にいる赤ちゃんはへその部分に穴があいています。その穴には血管(へその緒)が通っていて、栄養や酸素が赤ちゃんに運ばれます。この穴は生まれるとすぐにふさがっておへそになります。ところが皮膚の下の腹壁部分がふさがらずに穴が残ってしまう場合があります。そしてこの穴から脂肪や腸などがはみ出てへその部分が出っ張った状態がへそヘルニアということになります。
出っ張っていても中身が脂肪で穴がとても小さかったり、成長と共にふさがって固定した状態になれば、見た目は少し気になりますが問題はありません。穴がふさがっていない状態では出っ張りをもみもみ押すと平らにすることができます。つまり、はみ出ている脂肪や腸が出たり入ったりできる状態になります。ワンワンほえたり、うんちできばったりすると出っ張りは大きくなって、寝ていたりして静かにしていると小さくなります。出入り可の時は痛みや炎症がありませんから動物は何ともありません。
へそヘルニアが問題になるのは、はみ出ている組織が炎症やねじれで腫れてしまって引っ込みが付かなくなったときです。この場合は血行障害をおこし激しい痛みともない、時間がたつと組織が壊死してしまいます。特に腸がはみ出て穴の部分で戻らなくなると、腸閉塞起こしてしまいますから、緊急に手術しなければいけない状態になります。へそヘルニアでも腸が出てくるほど穴が大きい場合は、問題を起こす前に手術で直しておくことが必要です。
動物の大きさにもよりますが、指の太さほどの穴が残ってしまっている場合は手術しておいた方がいいと思います。へそヘルニアがあってまだ獣医に診てもらっていないという方はぜひ検診を受けて、治療が必要かどうか、あるいはどうなったら治療しなければならないのかなど確認しておいて下さい。