コラム FM小田原 胃の病気
胃の病気について
担当 石川正樹(ほたる動物病院)
胃の病気は、来院する病気の中かなりの割合を占めます。胃の病気で来院する症状としては、嘔吐、吐き気、食欲や元気の低下、まれに下痢をするというのが特徴です。その症状も、はっきり分かりにくいものから、突然出る危険な病気、だらだらと経過の長い病気までいろいろあるので、『吐いている』という電話だけではなかなか判断が難しいので、詳しい話を聞いたり、診察して状態を見てみないと分かりにくいという、ある意味獣医師泣かせの臓器でもあります。
一般的に良く見られる原因としては、胃内異物、胃炎、胃潰瘍、胆汁嘔吐症候群があり、まれな原因として、幽門狭窄(胃の出口が狭くなる事)、胃拡張胃捻転、腫瘍などがあります。
その中で、胃内異物は若くて食欲旺盛でいろいろなものに興味を示すような元気な子に多く見られるのが特徴です。なんでも口にしてしまう子は要注意です。消化されない物が胃に残ったままだと、胃炎になってしまい、腸につまってしまうと腸閉塞という大きな問題になって危ない状態になる場合もあります。胃の中に残っていれば、吐かせる処置で出してくれる子もいますが、出ない場合は外科手術や内視鏡により摘出します。予防は、食べてしまいそうなものを置かない事が基本です。良い香りのする、骨、お菓子の袋や、飼い主さんの臭いのついた靴下、ハンカチ、ストッキングなど、また、遊んでいて楽しい物で、ビニール、紐、ボールなどを食べる事が多いです。対処法としては、とにかく食べそうな物は置かない事!もし、食べてしまいそうな物をくわえていたら、『あっ!』と言うとびっくりして飲み込んでしまうので、別の物に興味を引かせるなど落ち着いた対処が必要です。
胃炎は単純に胃が荒れてしまった状態。胃潰瘍は胃炎がひどくなり、胃粘膜の奥まで荒れてしまった状態のことを言います。胃潰瘍のひどいものでは胃に穴があいてしまう事もありますので、注意が必要です。原因は、消化されにくい食べ物、毛玉、腐敗物、ウイルス、細菌、腎不全、ストレス、薬、アレルギーなど多種多様です。治療は、原因をはっきりさせてその治療をおこなう事と、対症療法として、吐き止め、制酸剤、粘膜保護剤、絶食絶水などが一般的な治療です。
胆汁嘔吐症候群とは、空腹が長く続いたときに、黄色の胆汁を少量はいてしまう状態です。対処法は、食事の回数を増やして空腹時間を短くしてあげる事でよくなります。
胃拡張捻転症候群とは、食後数時間後に胃がパンパンに腫れ、すぐに対処しないと命にかかわってくる危険な病気です。グレートデン、セントバーナード、アイリッシュセッター、シェパードなど、大型犬の胸の深い犬種に発生しやすく、小型犬や猫ではほとんど見られません。胃の運動低下や食後など胃が大きくなった状態から、運動などにより胃がグルッとねじれてしまうと起こります。症状は、お腹がパンパンになり、吐きたくても白い泡しか出てこない、腹痛などです。怪しいなと思ったら、すぐに動物病院に連絡しないと間に合わない事もあります。予防の方法は、一日一回の食事にしない事、大量の水を一気に飲ませない事(特に夏)、食後数時間は運動を避ける事です。
その他、幽門狭窄や腫瘍に関しては、経過の長い嘔吐が特徴なので、細かい検査をしないと分かりません。
胃の病気は他にもまだまだありますが、このように、胃の病気だけでもいろいろな原因があるので、いつもと様子が違ったら、すぐにかかりつけの動物病院に連絡してください。