コラム FM小田原 耳の手入れと病気
耳の手入れと病気
担当 下山 昇(下山動物病院)
耳の家庭でできる日常の手入れとしては、週1回程度のそうじで十分でしょう。耳の中に毛がはえてくるシーズー、マルチーズなどの犬種では、まず毛抜きで毛を適度に取り除き、それからそうじします。そうじのし方は、できれば専用の洗浄液を使い、やさしく耳の付け根をマッサージする様な感じで、耳の中のよごれを洗い流します。耳の中をふく場合は、けっして奥までいじらないで、耳の穴の手前あたりまでをやさしく湿らせためん棒、ウエットテッシュなど乾いてない物でぬぐって下さい。あまり力を入れてふくと耳の奥によごれを押しやったり、耳の粘膜を傷つけて以下にある様な病気になる場合も多く見られます。よごれがひどかったり、何か異常に気付いたり、あるいは耳をあまりさわらせない子は家庭では無理にそうじしないで、かかりつけの病院にまかせた方がよいでしょう。
次に耳の主な病気について説明します。
1. 外耳炎
急性あるいは慢性の外耳道(耳の穴の中)粘膜の炎症を中心とする病気で、耳の穴の手前に及ぶこともあります。犬ではかなり多く見られます。原因は外耳道に蓄積した耳垢(じこう、一般にみみあか)に細菌や酵母が繁殖し、粘膜に感染が成立したもの、その他異物によるもの、耳ダニによるものなどがあります。また耳そうじの際にめん棒によって粘膜を傷つけてしまったり、奥によごれを押し込んだりして炎症が起こることもあります。その他、外耳道内へ水が侵入し、残留した水の浸潤と耳垢の貯留と腐敗による刺激が重なって発症する例も多いです。季節性は認められないものの夏季に悪化する傾向があります。コッカー・スパニエル、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、シーズー、ビーグルなど耳の立ってない犬種、外耳道に毛の多い犬種、皮膚にべたつきの多い犬種などでは、外耳道の通気が悪いため、細菌や酵母などの繁殖が起こりやすく外耳炎発生の原因の一つとなっています。またなかなか治らない外耳炎の場合は中耳炎が存在することもあるので注意を要します。
症状としては、痒みや痛みを訴え、首や耳を振ったり、後肢で耳をひっかいたり、炎症のある方の耳を下に傾けたりします。痛みのために飼主に耳や体をさわらせなくなり、攻撃的になることもあります。耳垢が多くなったり、耳に悪臭が伴ったりした時には本症の疑いが強いです。また経過が長くなると慢性の外耳炎となり、なかなか完治し難い場合も多く見られます。
2. 中耳炎
外耳道の先にある鼓膜より奥の炎症のことで、感染性とアレルギー性があります。感染性では外耳炎からの波及や、鼻やのどの奥とつながる管を介しての感染から起こることもあります。急性のものでは、中耳内に炎症性の水様成分が貯留する場合もあります。慢性のものでは、膿が貯留し、鼓膜が破れて外耳道から排出され、外耳炎と誤ることもあります。また重篤な例では、内耳の小さい骨が溶けたり、神経に炎症が及ぶこともあります。
症状としては、耳の痛みが顕著で、元気消失や首の周辺をさわられることを嫌がることが多いです。その他、頭を傾けたり、のどの腫れなどが見られる場合もあります。
また炎症が神経に及ぶと運動失調、斜頚(首を傾ける)、顔面神経麻痺などが現れることもあります。
以上いずれにしても、耳やその周辺に異常が見られたら家庭では無理に処置しないで、早めに病院で診察を受けて下さい。