コラム FM小田原 アレルギーとは
免疫・アレルギーとは何か
担当 石井和義(おだわら動物病院)
一度感染すると、同じ感染症には再びかからないという現象を、病気を免れるという意味で『免疫』と言います。しかし病原体に感染した場合だけでなく、輸血や臓器移植などを行った場合にも、この免疫現象は認められます。これは、動物の体が自分以外の血液や臓器を異物(病原体)と見なしてしまうために起きる現象です。
免疫とは、簡単に言うと体内に侵入してくるものを自分のものか他人のものか見分け、他人のものであった場合にはそれを排除する過程のことですが、この免疫システムが過剰に反応し過ぎると、様々な問題を引き起こしてしまいます。この過剰な免疫反応のことを、アレルギー(過敏症)と言います。
アレルギー反応には様々な種類があり、大まかに言うと、数時間以内に症状が出る場合と、1~2日の時間が経過してから反応が出る場合があります。この反応時間の差から、前者を即時型アレルギー、後者を遅延型アレルギーと言います。即時型アレルギーの中には、アナフィラキシーと言ってショック状態になってしまう場合もあるため、注意が必要です。遺伝的あるいは家族性にアレルギーを起こしやすい体質のことを、アトピーと言います。
アレルギーを分類する場合、その抗原(アレルゲン)により分類する方法と、症状により分類する方法とがあります。抗原の代表的なものは、人では「花粉症」があります。これは花粉がアレルゲンとなり、人の体内に侵入することによって様々な症状を引き起こすアレルギーですが、動物で多くみられるのは、人でもお馴染みの『アトピー性皮膚炎』です。アトピーとは、「奇妙な」「不思議な」という意味のギリシャ語から由来していて、「原因不明の不思議な皮膚の炎症」という意味でそう呼ばれるようになりました。アトピー性皮膚炎は、抗原の種類、侵入経路、季節、年齢、体質、遺伝的素因等が複雑に関連しています。食事との因果関係も指摘されており、年々増加傾向にあるものの、特効薬や特異的な治療法のない厄介な病気のひとつです。
動物では、アトピーの他に食物アレルギーや外部寄生虫性アレルギーなどがよくみられます。食事アレルギーの場合は、栄養素となるタンパク質が完全に分解されないまま体に吸収され、そのタンパク質が栄養素ではなく異物として認識された結果、皮膚の痒みや炎症などの症状が発生します。完全に分解され難いタンパク質は玉子や肉類などに比較的多く含まれていますが、煮たり焼いたり火を通すことで消化されやすくなるものの、焦がしたりすると逆に分解され難くなるので、注意が必要です。
アレルギーはいつどんなかたちで症状が発現するか、予測することは不可能です。去年まで何ともなかった動物が、ある年、急に症状を出すケースも珍しくありません。今まで何ともなかったからと言って、今後もアレルギーにならないとは限らないのです。また、アレルギーと免疫力は密接な関係があると言われているため、動物にストレスを与えない、栄養のバランスの取れた食事を与える、適度な運動をさせるなど、適切な生活環境を提供することがアレルギー体質の動物にとっては非常に大切です。