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コラム FM小田原 うさぎの飼い方と病気2

うさぎの飼い方と病気 2

担当 清水敦志(みゆき動物病院)

前回は飼い方などの総論についてお話しましたので、今回は病気などの各論をお話ししたいと思います。
まず、前回お話した事の復習ですが、食事管理の誤りが元で病気になる事がウサギは本当に多く見受けられます。
最初に食事管理の誤りが元で起こる病気を説明します。
1) 毛球症:毛の抜け替えの時期に良く認められます。ウサギは几帳面にグルーミングをします。その際一緒に被毛を飲み込んで、胃の中で毛が固まって毛球が作られ、特に胃の出口につまる事で、食欲不振などの症状が出ます。ウサギと同じように猫も毛球症になりますが、猫はその毛玉を吐く事が出来るので、食欲不振には成図ライですが、ウサギは嘔吐する事が出来ないので、いったん毛玉症になると、胃を切開して毛球を取り出すなどの手術が必要になる場合が多いです。高線維の食事をしっかり与え、ブラシングを毎日する事で、ほとんど防ぐ事が出来ます。
2) 不正咬合:ウサギの歯は常生歯といって、犬や猫や人と異り、生涯歯は伸び続けます。通常は牧草などの食事をしっかり与える事で、歯を摩耗させて歯の長さを調整しています。不正咬合には生まれつき起こる場合と歯が摩耗出来ない食事(柔らかい食事、牧草を与えない)により、摩耗回数の減少によっておこる場合が考えられます。切歯が不正に伸びた場合は、簡単な処置で切る事が出来ますが、不適切な食事が原因の時の不正咬合は、主に臼歯が不正咬合を起こすので、麻酔をかけなければ、処置が出来ません。(ウサギはおちょぼ口なので、麻酔をかけなければ、臼歯はみる事が出来ない)
3) 尿路結石:食事の栄養素のアンバランス、最近の感染、特有なカルシウム代謝などの生理学的要因が発生に関与しています。結石の多くは炭酸カルシウムで、カルシウム含量の多い食事を摂取する事が原因のひとつになります。症状は血尿、頻繁な排尿、排尿障害がみられ、結石は腎臓、尿管、膀胱、尿道などに形成されます。
4) 脂肪肝:長期間食欲がないウサギは脂肪肝を発症する事があります。他にも高カロリーや高脂肪の食事ばかり摂食し、肥満する事で、発症に関与しています。食欲のないウサギは、流動食などを強制的に与える事で、予防する必要があります。また、ちゃんとした食事で、肥満を防ぐ必要もあります。
5) 腸性中毒(腸管毒血症):腸内細菌叢に悪影響を与え、細菌が毒素を出して、下痢などの悪影響を及ぼす病気です。離乳したばかりの幼体のウサギやストレスや抗生物質の投与を受けたウサギ、パンやお菓子などを多量に食べているウサギによくみられます。急死する事もある恐ろしい病気です。
6) 肥満:高カロリー、高脂肪、低線維の食事により、ウサギは肥満になります。また、飽食や運動不足もその大きな要因となります。過度の肥満ウサギは、体重負荷により四肢に皮膚潰瘍がみられたり、肛門に口が届かないため食糞が行なえず、内蔵に影響が表れたりもします。腎不全、肝不全の要因にもなるほか、心臓や血管にも影響を及ぼします。
以上が食事管理の誤りが元で起こる病気です。もう一度いいますが、食事は干し草と野菜を中心に与え、ラビットフードは制限して与えるようにしましょう。

次に老齢でおこる病気です。
1) 腎不全:元気喪失や多飲多尿などの症状が一般的です。重症例では、血尿、体重減少の症状あらわれます。
2) 腫瘍:ウサギでは特に子宮腺癌、乳腺腫瘍が多く発生します。なかでも子宮性癌はウサギに最も好発する腫瘍です。特に3才以上のウサギに多く、5才以上の雌のウサギの半数に発生するといわれています。(加齢と共に増加傾向が認められ、遺伝も関与していると推測されています)症状は陰部からの出血や血液などの分泌物がみられ、末期では消化管への癒着、肺や肝臓の転移などもみられます。
乳腺癌は急速に乳腺が大きくなり、乳腺の皮膚に自壊がみられるのが特徴です。他の乳腺、肺やリンパ節へも転移しやすく、多くが末期になるまでに、体調や食欲に影響があらわれにくい恐ろしい病気です。

最後に、多く見受けられるその他の病気を挙げておきます。
1) 消化管内寄生虫:ウサギには、蟯虫や、コクシジウムという虫が多く寄生している事があります。蟯虫は糞に白い虫が一緒に排泄されることで発見されます。コクシジウムは激しい下痢を起こす事があり、幼体は死亡する事もあります。検便をすることで、寄生虫の卵をみつけることで診断します。
2) スナッフル:鼻炎から肺炎などに進行する伝染性の呼吸器疾患の俗名です。原因はパスツレラをいう細菌によるものが圧倒的です。症状は漿液性の薄い鼻汁とくしゃみですが、症状が進行すると粘性から膿性の鼻汁へと変化します。また、さらに進行すると肺炎となる事もあります。しかし、症状がみつけやすいため、早期の段階で治療を開始する事で、大事にいたらず治りますが、完治せずに慢性化したり、無症状保菌者になってしまったりする事が少なくありません。また、伝染性がとても強いため多頭飼育の場合は、病気のウサギを厳重に隔離しないと病気が広がってしまいます。

以上で主だった病気の説明は終わりますが、検便などの検査や健康診断を飼い始めたらなるべく早い時期に行い、適切な環境と食事を与える事で、ほとんどの病気は、かからなくする事が出来ます。

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